繁盛店づくりのプロフェッショナル

Designer 斧 隆幸

株式会社VC ビクトリアンクラフト 代表取締役 斧 隆幸

理屈や形式じゃない
アイリッシュパブは文化そのもの

 

斧 隆幸
株式会社VC ビクトリアンクラフト 代表取締役

 

英国の街角をそのまま切り取ったかのような、赤や緑の印象的なファサード。
仕事帰りのひととき、日本人も欧米人も皆好みのビアグラスを傾け、談笑する。
今や日本でもおなじみになったアイリッシュパブ。
パブ=パブリックハウス、つまり公共の空間であり、コミュニティの場としての役割を果たしてきたという、文化的背景を持つ。
日本国内におけるアイリッシュパブのデザイン、プロデュースでトップを走るのが、ビクトリアンクラフト(以下VC)の斧 隆幸代表だ。
本物のアイリッシュパブを日本に広めた先駆者に、その真髄を教わった。

 

Profile
1968年生まれ、大阪府出身。1995年、長野県松本市に英国アンティーク家具専門店ビクトリアンクラフト創業。1998年に店舗プロデュース業を開始する。2011年社名をVCに変更し、東京事務所を開設。

 

“店をつくるのではない パブという空気をつくる”

 

イギリス北部ランカシャーに、25年来通うパブがある。年に数回、渡英するたびに立ち寄れば、誰かしらに会うなじみの店。「おまえ最近見なかったな、どうしてたんだよ。ところでいつも何曜日に来ているんだ?」「いや、俺は今日本に住んでいるんだよ」「ばかいえ、おまえはずっと前からここにいるじゃないか」。みんな信じてくれない、と斧 隆幸氏は苦笑する。パブとは、帰る場所。仲間がいる所。たとえオーナーが代わっても、街のその場所にパブはあり続ける。

 

英国でたっぷりパブ文化を満喫した若き日の斧氏。だが帰国してみれば、日本にはパブのような場所はなかった。「ビールを本当においしく飲める店がない。居酒屋じゃない、バーじゃない。ないならつくろうと。それがアイリッシュパブを手掛けたきっかけです」。そして2004年、友人と松本市に「OLD ROCK」をオープン。これまでなかったパブというスタイルは大反響、瞬く間に地元の人気店に。2年後、経営を友人に譲り、自身はプロデューサーとして本格的な活動を開始する。「俺の娘が成人して一緒に飲めるようになるまで潰すなよって言っておいたんだけど、大丈夫そうやね」と笑う斧氏。「OLD ROCK」は今も連日大繁盛。常連さんの中からカップル誕生・結婚といったニュースも珍しくなく、これぞまさに地域のコミュニティ、“パブリックハウス”である。株式会社VC ビクトリアンクラフト 代表取締役 斧 隆幸
パブをつくるならVC、とギネスからも推される斧氏。彼は自身を「デザイナーというより店舗プロデューサー」と位置づける。なぜなら、基本的に本場のものを再現しているだけだから、とさらり。だが、その再現が実は非常に難しい。近年日本にもアイリッシュパブが増えてきた。多くの人が海外でパブの文化を体験し、楽しさを知り、パブの経営へと乗り出す。しかし本場と同じ楽しさを再現するには、見た目や料理を整えるだけでは足りない。問題は文化なのだ。
「例えば日本人は赤提灯を見れば、それは居酒屋だとすぐ分かる。もし赤提灯がプラスチックでできていたらそれは偽物に決まってる。同じように日本人が適当に“パブ風居酒屋”をデザインしたら、英国人にはちぐはぐなところがすぐに分かっちゃうんです」。その違いまで理解し、歴史的・文化的に正しいハードをつくる。そしてパブの魂である“空気”を満たす。だから、VCのつくったパブには、本場さながらのにぎわいと、温かなコミュニティが生まれるのだ。

 

クライアントにはまず、コンセプトを明確化するためのヒアリングを行う。パブというディテールから入るのではない。パブという業態を使って、何を提供したいのかが重要だ。「僕にとってのお客様は、店のオーナーさんじゃなくて、あくまでも来店客。この店で金を払って楽しみたいと思ってくれる人々に、何を提供したいのかを明確にしないと。本当にお客様の立場に立つことが大事なんです」と斧氏。この店の強みは何か、どんな空気にしたいのか、どんなシチュエーションで使ってもらいたいのか。全て把握した上で、初めて店づくりがスタートする。

 

VC松本本社では英国から輸入した家具やドア、ステンドグラス、雑貨といった本物の味わいのあるアンティークが揃う。また、工房ではオリジナルのアンティーク調家具などの製作も行っている。店舗において、本場の空気を再現しつつ、現代日本の空間にトランスレートするための重要な役割を果たしている。
行きつけの店をつくりたいという潜在的な欲求。そこに行ったら友達がいる。特別な扱いを受ける。ホームになる店を皆求めている。それをきっちりコンセプトに入れてつくる。それがアイリッシュパブのパブたる意義。そう語ると、斧氏はギネスをぐっと飲み干した。

 

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  TAP BORROW アイリッシュパブ(渋谷区)

ビールも料理もうまい、ノリのいいパブ
1階が同経営の「俺のハンバーグ山本」。2階まで足を運んでくれたお客様に、ドアを開けてすぐに声をかけられるよう、入り口すぐにカウンターを配置。カウンターは客が立っても座っても、カウンター内の人と目線の高さが同じになるよう計算されている。

 

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  The Cooper’s アイリッシュパブ (名古屋市中村区)

狭さの中に生まれるにぎわいと連帯感
懸念は11坪という狭さ。しかしこの狭さを逆手に取り、あえて混雑感を演出した。「本物のパブ」にこだわり、キャッシュオンデリバリーなど現地さながらの接客を徹底。スタッフもパブ好き、おしゃべり好きな人々を採用し、店の空気を盛り上げる。

 

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  Public House HOSANNA パブリックハウス(兵庫県姫路市)

徹底した本物志向で英国の空気を再現
海外でパブを体験し、「これこそ自分のやりたかったことだ! 」と目覚めたオーナー。やるからには本物をつくりたいとギネスに問い合わせ、VCを紹介される。3階建の店舗は一人飲みからパーティまで幅広く対応。世界のビールが楽しめる人気店だ。

 

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  LIFE STYLE MARKET 物販店、カフェ(長野県松本市)

印象に残るチューダースタイルにリノベーション
2011年にオープンしたVC ビクトリアンクラフトの直営店。長野県松本市にある物販やカフェなどの複合マーケットだ。古い純和風の建物を全面的にリニューアル。はるかアルプスを望み、裏には川が流れる自然美を背景に建つ。「お金では買えない価値の創出です」

 

株式会社VC ビクトリアンクラフト

 

 

名称株式会社VC ビクトリアンクラフト
TEL03-6804-5790(東京事務所)
営業時間9:00~18:00
定休日不定休
URLwww.shop-produce.com
住所東京事務所:東京都渋谷区神宮前2-6-6 秀和外苑レジデンス508
松本本社:長野県松本市新橋6-16 LIFE STYLE MARKET内
設立
従業員数
対応エリア全国
施工実績 OLD ROCK(アイリッシュパブ)、Man in the Moon(アイリッシュパブ)、Abbot’s Choice(アイリッシュパブ)、The World End(アイリッシュパブ)、THE GRUB(アイリッシュパブ)など

 

 

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