繁盛店づくりのプロフェッショナル

開業予定者へ贈るメッセージ 北田 たくみ

開業予定者へ贈るメッセージ

建築家/家具デザイナー  北田 たくみ

建築家/家具デザイナー

北田 たくみ

 

通商産業省(現経済産業省)を退職後、1990年㈱のるすく(norsk)を設立。

現在デザイン設計室(川崎市溝の口)とオリジナル家具を扱うnorskショールーム(目黒区都立大学)を常設。著書に「バブ ひとり言の多い人に…」(テレビ朝日出版)がある。

 

 

 

事業内容

店舗のデザイン設計、住まいの建築設計/リフォーム、

空間デザイン/インテリアコーディネート

 

 

 

 建築家・北田たくみが語る「持続力」のある店づくり

 

建築家、家具デザイナーであり、のるすく(norsk)の代表の北田たくみ氏。P.64での紹介記事でもあるように、広葉樹の無垢材を使用した家具のデザインを特徴とし、「気持ちのいい場所」をテーマにした店づくりを行っている。そんな北田氏が考える「気持ちのいい場所」とは? 「その店が継続され続けることが繁盛店の定義」と唱えるその真意とは? ここでは、小説や映画の脚本の執筆経歴のある同氏による店づくりへのこだわりや想い、情熱を、スト—リー仕立てで書き下ろししていただきました。北田流「繁盛店づくりの定義」をお届けします。

 

 

いろんなストーリーを思い描きながらそのあり方を具体的に示していく

もし見た目優先の内装を求めて基本設計を進めるならば、そのデザインはファッションのようにやせ我慢的な要素も多く含まれることになる。しかし飲食の店舗設計の場合、それだけでは通用しない。お客様が店内に「一時的な滞在」をすることを前提とした、快適で心地のよい居場所を用意することが必須となる。季節や天候も含め、あらゆる場面を想定した配慮のある工夫。それをどこまで適切に空間に取り込むことができるかが、勝敗のカギとなるはずだ。

例えば、におい、光、素材、目線、空調、高さ、厚み、段差、出隅、入り隅、荷物、傘、コート、トイレ、収納、家具の寸法、メンテナンス、搬入ルート、動線…。気を配るべき点を挙げればキリがない。時間の許される限りいろんなストーリーを思い描きながら、そのあり方を具体的に示していくことで必要に応じた形が生まれ、その集合体が基本設計に結びつく。これが「のるすく流」店舗デザインである。

 

繁盛店になるには、それなりの理由が存在する。第一に、「持続力」なくして店は成立しない。言い換えるならばそれは「お客様に必要とされること」その一言に尽きる。一度訪れたお客様が再度その店を訪ねる理由を、設計の段階でプランに落とし込むことができたならば、リピートは成立する。たくさんある店の中からあえてその店を選ぶ。「好印象な記憶」は常に追い風となり、店は生き残る術を手にするだろう。

初めての場所に足を踏み入れるとき、勝手が分からないと不安を感じることがある。店のドアを開けた瞬間、そこは見ず知らずの異空間。一瞬立ち止まり、店内の様子をうかがう客の目線。もし雨の日ならば傘を持ち、冬の日であればコートを羽織り、買い物帰りであれば手荷物を持っているだろう。そんなときに最初にかける言葉こそ、店の印象を決定づける最大の武器になるはずだ。

 

 

「いらっしゃいませ。今日はあいにくの雨ですね」

にこやかに迎え入れ、傘を預かるスタッフ。ちらりと手元を見てもう一言。

「もし差し支えなければこちらに荷物を置く場所がございますよ」。

「じゃあ、そうしようかな」

荷物から解放され、身軽になったお客様にさらにもう一言つけ加える。

「壁にコート掛けがついておりますのでどうぞお使いください」。

軽やかに対応し、客席へとご案内する。

 

 

初めてのお客様であっても打ち解けることのできる場所。例えるならばそれは大自然の景色。いつも変わらずに受け身であり続けることでしか、成し得ない大きな魅力である。だからこそ、日々の営業に対し、確実な手助けとなるように店内の動線や備品、レイアウト等を決めなければならない。開店から四季の移り変わりを通して繰り広げられるであろう日常のやり取りをこと細かに想像しながら店のスタイルに合った空間のあり方がどうあるべきかを分析し、デザインを重ねてゆく。店の方向性やコンセプトには忠実に従いながらも、形だけの希望にはとらわれ過ぎないように設計することも重要な仕事である。

 

 

何年経っても、どんなときでも変わらず快く迎え入れられる空気感の店を

もし店づくりの内装にかけた最初の予算が、給料いらずで働く中堅スタッフのような役割を果たし、いつもお客様を快く迎え入れる空間になるのであれば、むしろ合理的かもしれない。

 

最近では、住宅の内装にも非日常的な場面を求められるケースが増えてきた。つまり、外でお金を使う機会も減る傾向にあるということだろう。ならば、「これはこのお店に来ないとなかなか味わえない空間だなぁ」と感じさせる絶対的な空間をつくり上げることも大切だ。

 

その手法として、まず空間から普段見慣れたものをできるだけ排除する。カタログからの選出を極力避けて、可能な限りオリジナル製作したものを店内に散りばめる。その分、手間とお金を費やしたとしても、売上に繋がる投資になるのであればその価値は高いのではないだろうか。

完成したときがいちばん美しいのではなく、ときを重ねてその空間に日々の時間がじわじわとしみ込んでいくような店。何年経っても、どんなときでも変わらない空気感でお客様を迎え入れられる店をこれからもつくり続けていきたい。

 

 のるすく「こだわりの仕事」実例

 

 

 

 

 

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